こんばんは。
今日のニュースを見ていたら,東京地裁で,警察官が令状なしに持ち物検査をしたことが違法であったとして無罪の判決を言い渡したというものが会ったので取り上げてみました。
男性が警察官から職務質問を受けた際,警察官は捜索差押令状が発行されていないにもかかわらず男性の乗っていた車のウエットティッシュ箱を勝手に空けて覚醒剤などを発見したということでした。
その時,男性から講義を受けたものの,箱を返すことはしなかったそうです。
そして,男性は現行犯逮捕されたということでした。
裁判所は,「警察官の令状手技への無理解が甚だしい。今後の違法捜査を抑制するため,無罪を言い渡すほかない。」と述べたそうです。
また,警察官は,公判で「箱の中身を取り出そうとすれば男性が観念すると思った。」と述べたそうです。
本件は,覚醒剤を所持していたにもかかわらず無罪になったという特殊な事案です。
その理由については,記事にはきちんと書いていなかったのですが,おそらく違法収集証拠排除法則によるものだと思います。
これは違法な手続によって収集された証拠は有罪立証の証拠から排除されるという法則です。
本件では,覚醒剤所持に関連する証拠関係がこの違法収集証拠排除法則によって証拠として利用できなくなり,検察が有罪を証拠で証明できなかったことから無罪になったのではないかと思います。
刑事裁判は,被告人側が無罪であると立証する必要はなく,検察が有罪の立証に失敗すれば無罪となるので,おそらくこの案件は違法収集証拠排除法則によって検察の有罪立証失敗ということがこの結果に繋がったのだろうと思いました。
この被告人は,つまるところ覚醒剤を所持していたことは間違いはなく,この方をそのまま無罪放免とすれば端的に治安の問題は大丈夫なのだろうかという不安はあります。
特に,記事によれば,この男性に対する検察の求刑は懲役4年だったということですから,通常の覚醒剤所持事案よりも重い情状であり,そのような案件で無罪にすることはどうなのだろうという問題意識は当然あるだろうと思います。
その意味では,このような裁判所に姿勢に疑問を持たれる方もいるかも知れません。
しかし,ここで違法収集証拠排除法則を適用しなければ,令状なしでも捜索差押えをすることを裁判所が許すことになるので,警察がその前例を元に捜査をすることも問題だとも思えます。
特に,警察官の公判証言によれば,令状発行前の捜索差押えの理由についても,「箱の中身を取り出そうとすれば観念すると思った」という特に緊急の必要性を感じないようなことで行ったということもわかり(緊急性があったからといっていいということはないのですが。),その意味でも捜査に対しては強い非難に値すると思います。
そうすると,私の価値判断としても,今後の捜査のための前例とされないようにするため,本件においては警察が令状発行を待たずに捜索差押えを行ったことを問題視して無罪としたことも致し方ないのかなと思いました。
このような違法捜査事案はあまり見るものではないのですが,それでも未だ一定数存在するのだなと改めて思います。
多くの警察官は法令を遵守して捜査しているとは思うのですが,今回の無罪判決を教訓として警察の方々にはいっそう職務に励んで頂ければと思います。
また思いついたら書きます。ではでは。
三枝康裕 |
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23:20