こんばんは。
今日の判決といえば最高裁の嫡出推定とDNA鑑定のものが最も注目を浴びるものだと思いますが,こちらの件は機会があればここで述べることとして,今日はある無罪判決について取り上げてみたいと思います。
札幌地裁は,ある速度超過事案について無罪判決を下しました。
この事件は,運転者が自動車を運転して国道を走行中,オービスで制限速度を34キロ上回る測定がされたというものです。
しかし,この速度超過の際,運転者は後続車に煽られており,危険を避けるために前方車両を追い越そうとやむを得ず速度超過をしたのだと主張しました。
そして,裁判所は,後続車は被告人の車に密着して迫っており,生命の危険が存在していたとして,緊急避難を認めて速度超過に違法性がないとして無罪としました。
札幌地検は,予想外の判決であり,上級庁と協議して対応を決めると述べているそうです。
この判決を見て,まずは緊急避難の主張をした弁護人が大したものだと思います。
緊急避難は,簡単に言うと,急な危険などを避けるtめにやむを得ず他者の権利を侵害したりした行為について違法性がないとする考え方のことです。
弁護人は,被告人の話を聞き,それを法的に構成して,証拠に沿って主張を展開するのが仕事ですが,この法的に構成するという作業がなかなか問題だと思います。
それは経験の問題であったりセンスの問題だったりするのだろうと思いますが,今回弁護人は運転手の話を聞いて緊急避難の主張をしようと思い立ち,それに沿う証拠関係を揃えて主張したのでしょうから,その点は腕のいい方なのだと思います。
本件では,緊急避難の判断に最も重要な証拠と思われるものはオービスの写真だったと思います。
このオービスの写真において,密着して煽る後続車が写っていれば,運転手の主張が裏付けられるものとなるでしょうし,逆にこれが写っていなければ運転手の供述の信用性のみで勝負をしなければならなかったでしょうから,非常に厳しい戦いとなったことでしょう。
その点どうだったのか私には分かりかねますが,おそらく状況に合わせてうまく振る舞ったのでしょう。
一方,検察においては,被告人の言い分を拾い上げて,法的にどのように構成される余地があるのか検討して裁判に臨まねばならないと思います。
その点,緊急避難という構成から準備をすることは難しかったのかもしれませんが,それでもそれをするのが検察の仕事でしょうし,その意味では検察の仕事に問題があったのかも知れません。
ただ,検察としても,この事案が特殊なケースということでなければ,今後の同様の速度超過事案において同じような主張をされかねないと思いますし,証拠関係を見て勝負できるという余地がある場合はなかなか引き下がることは難しいというように考えるのかも知れません。
裁判所も事情をくみ取ってよくこの判決を下してくれたと思います。
裁判官としても自身が妥当な判決と思うものを下すのは勇気のあることだと思いますし,その点この札幌地裁の裁判官はいい仕事をしたというように思いました。
ちなみに,煽っていた車の方はどうなったのだろうかと気になります。
煽り行為がそもそもの原因なのですから,少なくとも厳重に罰せられるべきでしょう。
オービスに同時に写っていればおそらく罰せられたのだとは思いますが,この事件の大元の人間の逃げ得は許さないようにしてもらいたいと思いました。
また思いついたら書きます。ではでは。
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