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 こんばんは。


 今日、最高裁で、コインハイブ事件の無罪判決が下されたので、取り上げてみました。

 この事件は、ウェブデザイナーの男性が、自身のウェブサイト上に他人のパソコンのCPUを使って仮想通貨をマイニングするコインハイブを保管したという不正指令電磁的記録保管の罪が問題となったものでした。
 具体的には、コインハイブによって、このサイトを閲覧した人のパソコンがそのサイトの閲覧中にサイト管理者の仮想通貨をマイニングすることに使われてしまうこととなり、これによってサイト管理者の男性は800円程度の利益を上げたということでした。

 この法律の要件は、反意図性、すなわち閲覧者の意図に反してスクリプトが機能する性質があったか、そして不正性となります。
 一審二審とも反意図性はあるとしたものの、一審はこのようなスクリプトは社会的に許容されていないと断定できないとして不正性なしとして無罪判決を下しました。
 一方、二審では、不正性ありとして有罪判決を下しました。
 そして、本日の最高裁判決が注目されていました。

 最高裁は、反意図性はあるとしたものの、不正性については社会的に許容される範囲内として、無罪判決を言い渡しました。
 その理由としては、このスクリプトはサイト閲覧中に閲覧者のCPUを一定程度使用するに止まり、その仕様も閲覧者が気づくほどのものではないというのが一つあげられました。
 また、ウェブサイトの運営者が閲覧を通じて利益を得る仕組みはウェブサイトによる情報流通にとって重要であり、広告表示と比較しても影響に優位な差異は認められないので、社会的に許容される範囲内だとしました。

 この判決は注目していたのですが、この結論は妥当だとは思います。
 というのも、刑事事件というのは刑罰という非常に重いペナルティがある以上、明確に違法と考えられるものに処罰を限るべきであり、「不正」という多義的な解釈の可能なものによって処罰の範囲が広がることは好ましくはないと思ったからです。
 特に、インターネットの世界の進歩はめざましく、それを既存の法解釈を広げることによって技術革新の足かせとすることはよろしくないと思われ、そういう意味でもこの判決はよかったと思いました。
 また、最高裁が、ウェブサイトの運営者が閲覧を通じて利益を得る仕組みは情報流通にとって重要だという、ネット上の表現の自由の仕組みにおける根本部分をきちんと考えてくれたことも評価したい点だと思います。
 この判決を機に、今後捜査機関は、プログラムの動作内容や利用方法についてより慎重に考えて動くと思われ、そのことは肯定的に評価すべきでしょう。

 一方で、閲覧者にとっては、自身のパソコンがマイニングに使われていたことは知らなかったわけで、非常に不快だと思います。
 マイニングが閲覧者のパソコンにどの程度影響するかはわかりませんが、旧型パソコンであればそれだけで動作が重たくなってしまうかもしれず、その原因がパソコンの調子ではなくコインハイブだったとすれば、それを不快に思うことは当然だろうと思います。
 今回の最高裁判決を受けて、コインハイブくらいだったら大丈夫というお墨付きを受けたという考えの下で導入するサイトが多く増えることが予想されます。そうなると、ネットでいろいろなサイトを巡回する際に無意味にパソコンが他者に利用されることとなると思われ、そういう世の中でよいものかと思うところもあります。
 これを広告と同義というべきか、最高裁は比較対象としてあげているものの、個人的には理解できる面はあってもやや納得のいかない部分もあります。
 そういう意味では、このコインハイブは最高裁の規範に当てはまる限りにおいて無罪となるということですが、これが許容される世の中が常にいいのかといえばどうなのでしょうか。

 最高裁が現行法の解釈においてこのような判決を下した以上、今後コインハイブに対して何らかの規制を加えるとすれば法律を改正するしかないと思います。
 この点については国会の仕事となるかと思いますので、今後はその点にも注目したいところです。


 また思いついたら書きます。ではでは。


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三枝康裕 | ニュース | comments(0)  | trackbacks(0) | 23:47

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