Powered 

by Tigers-net.com
 こんばんは。

 明日は雪という予報が出ておりますが,そういう日に限って私は朝と夕方に遠出があります。
 こればかりは致し方ないことなのですが,せめて雪が積もらないことを願うばかりです。
 雪が降った時の備えは一応はしておりますが,それでも降雪時の運転は大学時代にいろいろと恐怖を味わったので,なるべく控えたいものです。
 それは,自身の運転だけの問題ではなく,他者に巻き込まれることもあり得るという意味で,できれば運転せずに済むならばそうしたいものです。

 さて,今日は名古屋の女子学生が女性を殺害したという事件に関する続報について取り上げたいと思います。

 この女子学生は,高校時代の友達に毒を飲ませたという趣旨の供述をしているということです。
 そして,その高校の校長が記者会見をし,同じクラスだった男子生徒が薬物の影響と見られる症状で入院していたことを明かしました。
 男子生徒は,倦怠感を訴えて欠席が増えたそうですが,回復後今度は視力が低下したということで入院したということでした。
 医師は,薬物が原因の可能性があると指摘し,事件性を考えて警察に通報したそうです。
 警察は理科室などの薬品を調べたものの,生徒の体から検出された薬物は見つからなかったということでした。
 また,学校は,生徒の自宅や通学路も点検したものの,同じく不審な点が見あたらなかったということでした。
 男子生徒は休学し,その後復学したものの,自由に体を動かせず,最終的に特別支援学校に転出したということでした。
 校長は,これらの出来事を公表しなかった理由について,在校生に動揺を与えたくなかったと説明したということでした。

 今回これが発覚したのは殺人事件という最悪の結果があってのことであり,このことを次の被害者が出る前でよかったと考えるべきなのか,それとも未然に防げ得たと考えるべきなのか,何とも言えません。
 しかし,先日の佐世保の事件といい,こういう類の事件を起こす人については,事前に何らかの兆候があるというのが多いのかも知れません。

 今回の件で,この毒物混入に関して事前に気づけた人がどれだけいたのかは分かりません。
 それは,警察や学校がどれだけの調査を行ったのか,どのような痕跡があったのか,そういうことによって変わってくるでしょうし,一概に当時の調査を責めることはできないと思います。
 また,男子が生徒の症状が悪化していたということを考えれば,もしかしたら回復後に毒物を投与し続けていた可能性もあると思います。
 そうだとすると,学校側は公表をしませんでしたが,もしも公表をしていたら生徒同士も警戒をすることとなり,女子学生もその警戒の目を気にしてまで毒物投与を続行することができないという判断に至ったのかも知れません。
 ただ,それはあくまで一つの可能性に過ぎず,それだけをもって学校の当時の判断を誤りだということはできません。

 この男子生徒に対する行為については,刑事法としては,傷害罪もしくは殺人未遂罪ということになるのだろうと思います。
 しかし,少年法があるので,そこの問題があるでしょう。
 また,当時の事件については,女子学生の供述は得られるかも知れませんが,その行為を立証できるだけの証拠がどれだけあるのかという点ももんだいになるでしょう。

 民事法としては,損害賠償の問題になると思います。
 男子生徒の症状の詳細が分からないので,実際の額の問題までは分かりませんが,後遺障害が残るような事案でしょうし,相当な高額の賠償責任となるでしょう。
 問題は,本人には支払能力がないと思われるので,その親に対して法的に責任追及ができるかです。
 この点,未成年者が損害を与えた場合の賠償責任は,自己の責任を弁識するに足りる能力を持っていない場合,民法712条で未成年者は責任を免れる代わりに,民法714条によりその監督義務者である親権者が法的責任を負うという構造になっています。
 ただ,この自己の責任を弁識するに足りる能力というのは一般的に12歳くらいといわれているので,本件ではこの責任が問題にはなりません。
 そうすると,原則として,上記年齢を超える場合は親に対する責任追及はできません。
 例外的に,12歳より上の年齢の場合であっても,親の監督義務を違反したといえるような場合には責任追及をできる余地があると思います。
 そのような監督義務は,子どもの年齢や監督がどの程度できるかという状況によって個別具体的に判断されるようになるため,ここでは何とも言えません。
 この点は,殺害されてしまった女性の遺族の方についても同様の議論が当てはまると思います。

 という法的責任についていろいろと書いていきましたが,このような責任問題はあくまで事後的な問題に過ぎず,事前に防ぐことができるのが最良であることはいうまでもありません。
 それができる手立てがあったのかどうかは同種事犯の再発防止に影響があると思います。
 最近類似の事件が見受けられるような気がして,どのような形ではあれ再発防止を願うばかりです。

 また思いついたら書きます。ではでは。

↓もしよろしければ押して頂けるとありがたいです。

弁護士 ブログランキングへ
三枝康裕 | ニュース | comments(0)  | trackbacks(0) | 23:19
PAGE TOP