こんばんは。
今日のニュースを見ていたら,精神科医が患者に対して「病気ではなく甘えだ」等と言われて症状が悪化したということで,医師が60万円の賠償判決を受けたというものがあったので取り上げてみました。
男性は,自律神経失調症を患っていたそうですが,病気が悪化して2008年6月頃から休職していました。
そして,復帰のめどが立った11月,上司を交えて産業医と面談することになりました。
その時,産業医からは
「薬では治らない。病気を作り出しているのは君自身だ。」
「そんな状態が続いていたら生きててもおもしろくないだろう」
「君の症状は誰にでもあることだ。病気とはいえない,甘えだ。」
などと言われ,これによって症状が悪化したということでした。
そして,医師を訴えた結果,大阪地裁は60万円の賠償判決を下したということでした。
精神科の病気は外から見えないため,その評価などは他の病気に比べて非常に難しいと思います。
ですから,精神病に関する理解が乏しい一般人であれば,病は気からということで,気合いや元気の問題であろうと考えてこのような発言をすることはある意味よくわかります。
私も,周りに鬱病の人がいて初めてこの病気がどのようなものか知りましたし,これを理解が乏しい一般人が発言したとすればそれはまだ理解できるのです。
ただ,精神科医は,そのような精神的な病気について理解ある立場なのですから,その点について配慮が必要ではなかったかとは思います。
もちろん,外からわかりにくいだけに詐病の可能性もありますし,そのような場合は産業医として指摘をしなければならないと思います。
ただ,精神科の病気は,それを指摘できるだけの根拠もなかなか難しいでしょうし,その点気を遣わずに過失といわれてしまったとしても致し方なかったかとは思います。
このような事件において問題になるのは,具体的な医師の行為,そしてそれによって発生した悪化したという結果だと思います。
これらの立証は患者側がしなければならないので,患者側には大変な苦労があると思います。
例えば,医師の行為についてですが,それを録画などしているわけではないので,結局人の記憶を証言という形で証拠にしなければならないでしょう。
しかし,一方が自分に有利に運ぶために嘘の証言を行ってしまえば,それを崩すだけの材料をどこから持ってくるのか,非常に難しい問題が生じると思います。
その意味では,水掛け論になる可能性があり,立証が難しいと思いました。
また,医師の行為によって症状が悪化したことですが,悪化というためには医師の行為の前と後においてどの程度悪化したのかという比較資料が必要でしょう。
本件では,おそらく休職期間中に精神科に通院したことがあるでしょうし,行為の前の資料を集めることはできたと思いますし,行為後については集めに行くこともできたと思います。
ただ,精神的な病気というのは,外傷等と異なり,悪化が目で見て検証できないものですから,何をもって悪化というのか,非常に難しい問題があろうかと思います。
その意味では,勝訴判決を得るためにかなり苦労されたのではないかと推察されます。
さらに,これで判決を得ても,賠償金が60万円ですから,場合によっては弁護士費用を考えた時に赤字になってしまう可能性もあろうかと思います。
裁判を継続するために自分が払った労力も考えれば,よりマイナスかもしれません。
もっといえば,一審判決なので,控訴される可能性もあるでしょうし,そうなればもっと長い戦いとなるでしょう。
加えて,産業医を相手に訴訟を行うということは,元の職場にも居づらくなるのではないかと思われます。
それらの事情をすべて理解した上で訴訟に挑んだのでしょうし,それはもはやお金の問題ではなく,自分の名誉だったりプライドの問題だったり,そういうところを理由として戦ってこられたのではないかと思います。
そういう事件は時々私も経験しますが,そのような場合は初めにどのくらい弁護士が説明をして理解をしてもらった上で進んでいけるかという覚悟が非常に大事だと思います。
このような事件について,裁判中に覚悟がなくなってしまって終わりにしてしまうのは,誰にとってもよいことではないので,結局気持ちの問題で戦うという事件で大事なことは覚悟だろうと改めて思わされました。
ちなみに,今日は取り上げるような阪神ネタはありませんでした。
毎日興味を持ってみているのですが,やはりシーズンオフとなるとなかなかないものです。
また思いついたら書きます。ではでは。
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