こんばんは。
今日のニュースを見ていたら,小学校5年生の少年が自転車で女性をはねて寝たきり状態にしてしまったことに関し,親に賠償責任を認めたというものがありました。
事件は,2008年9月22日,少年が,マウンテンバイクに乗って時速20〜30キロメートル毎時で坂を下っていた際,女性に衝突したというものです。
これによって,女性は頭の骨が折れ,現在も意識が戻っていないそうです。
判決では,少年の前方不注意が原因と認定し,母親の監督義務違反を認め,母親に賠償責任を認めたということでした。
民法では,直接行為を行った者以外にも賠償責任を認めるという規定がいくつかあります。
その典型的なものは使用者責任で,例えば運送会社の従業員が交通事故を起こした際,事故を起こした当人だけでなく使用者である運送会社側も責任を及ぼすのが原則となるというようなものです。
同様に,事理弁識能力のない未成年者が他人に損害を加えた場合,親権者等の監督者が監督責任を負うというものがあります。
ここでいう事理弁識能力の有無はおおよそ12歳前後が目安とされていますが,そうすると本件ではこれを満たすように思われます。
となれば,親権者が監督責任を負うように思われますが,この民法の規定は親権者等の監督者が監督義務を怠らなかったときは責任を負担させないという条文になっています。
そこで,本件では,少年の運転に過失があったかどうかという点のほか,親権者がきちんと監督をしていたのかという点も争点になったようです。
その結果は,大変厳しいもので,少年の母親(記事によれば,少年には父親がいないようです。)に9500万円の賠償をするようにということになったようです。
なお,この事案は保険会社が絡んでおり,母親の保険会社に対する支払分等の細かい争点があるようですが,ここではそこは割愛します。
母親にしてみれば,自分の起こした事故ではないのにこれだけ多額の賠償責任を負担させられるのは何とも気の毒のように思えてきます。
しかし,被害者側の立場に立ってみれば,事故が起きないのが一番ですが,万一事故に遭ってしまったら如何に適切な賠償を受けるかが重要になってくるわけです。
そうすると,基本的な発想は賠償金を支払ってくれる相手方を捻出するという考え方が出てくるのは当然で,そのために母親が当事者として出現したのでしょう。
事実関係は証拠等がわからないのでこの判決の事実認定の妥当性は不明ですが,仮に認定された事実関係が正しいのであれば法的にはこの判決はおおよそ妥当ということになるのだと思います。
こういう事故を見てみると,改めて自転車というのは怖い乗り物だと思います。
私は大学時代に車の免許を取ったのですが,その際に道交法について学ぶことが非常に多く,特に一時停止線を意識するようになったのはその頃からだったと思います。
車の免許取得以降,自転車の運転の仕方も随分変わったように思え,振り返ってみたら私もその昔はそれなりに危険な運転をしていたものだと思い出します。
小学校の頃から基礎的なことは教わりますが,それ以上の部分は自動車教習所に行くまでは自らの体験より学んできたようなもので,その危険性を理解しないまま自転車を運転するのがいかに恐ろしいことかと思わずにはいられません。
この事故を起こした小学校5年生くらいでは,坂道の走行の危険くらいは体験的に理解はするでしょうが,それ以上ではなかったような気もしまして,その意味では私はたまたま運良く小学校の頃は事故を起こさなかっただけなのではないだろうかと思うところです。
私も自転車の絡む交通事故事件を何度も手がけたことがあり,その際には一様に自転車の方は賠償額の想像以上の多額さに不服に思われる傾向があると思います。
しかし,自転車の事故であろうと自動車と同様の法律が適用され,賠償額も同じように計算されます。
もちろん自転車と自動車では被害の規模が違うのが普通ですから,それに伴って比較的自転車の方が賠償額が少額であるということはできると思います。
ですから,賠償額が常に数千万円に上るという考えは間違いで,あくまで被害の規模がどの程度かによるということになります。
ですが,本件のように坂道でそれなりに速度が出ている状況で歩行者に当たってしまえば,当然被害も大きくなるわけで,賠償金も増加するのも当然です。
その意味では,現在の報道は自転車運転の危険性の話はよく論じられているものの,本件も広く周知し,自転車においても多額の賠償金を負担する可能性は十分にあるということを皆に理解してもらわねばならないのではないかと思いました。
また,親が子どもに自転車の乗り方を教える際には,今回のような事件をとくと伝え,監督義務を尽くすことが大事であるということも同時に思いました。
また思いついたら書きます。ではでは。
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