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 こんばんは。


 今日は最高裁でいくつか判決が下されましたが,ニュースで良く言及されているのは外れ馬券と経費に関するものでした。
 しかし,今日は最高裁大法廷判決で判例変更があった件について触れたいと思います。

 以前ここのブログで言及した際には,強制わいせつ罪に性的目的を要するかどうかという件について,最高裁が大法廷に事件を回付したというものでしたが,最終的に本日性的目的は不要という判断となりました。
 昭和45年の最高裁判決では,強制わいせつ罪の成立に性的目的は必要という判断だったため,それ以後今日まで強制わいせつ罪の成立要件として性的目的の存在を前提に検討されてきたわけですが,それが今日の最高裁大法廷判決で変わったということになります。

 最高裁大法廷の裁判長は,性的被害に関する規定は,社会の受け止め方を踏まえなければ処罰対象を適切に決めることはできないとして,強制わいせつ罪の成立を判断する際には被害の有無や内容,程度に目を向けるべきで,行為の目的を一律に要件とすべきではないと判断しました。
 この判決を受けて,最高検は妥当な判断とコメントし,弁護団は判例変更は不公平だと述べました。

 そもそも強制わいせつ罪に性的目的を要求するかどうかは,昔から刑法論の学説の中で大きな対立がありました。
 これを要求する理由としては,例えば医師の診療行為に当たって,裸の女性を触るという行為そのものを見れば強制わいせつ罪に該当するようにも見えるものの,医師には性的目的がないため強制わいせつ罪には当たらないと解釈するためにその要件を要求すべきというものがあります。
 一方で,医師の診療行為の件については,診療行為はそもそも正当業務行為なので違法性がないから,強制わいせつ罪として処罰されないからいいのではなどという反論があったりしました。
 かつて最高裁が昭和45年に性的目的を成立要件とすると判断した際にも批判的な意見が多かったようで,私が司法試験の勉強をしていた時もこの論点については相当批判が多かったと記憶しています。

 今回問題となった事件は,金を得る目的で,女の子にわいせつ行為をして画像を知人に渡した行為が強制わいせつ罪に該当するかというものでした。
 この行為そのものは強制わいせつ罪に当たるものですが,一方で金を得る目的で行ったわいせつ行為である以上,性的目的がなかったのだから,昭和45年の最高裁判決を前提にすれば強制わいせつ罪は成立しないというようにも思われ,その主張の対立がありました。
 本件のような事案は,強制わいせつ罪の成立に性的目的を要求するべきかどうかという点について議論があった際に取り上げられる事例の一つであり,これが現実に発生してしまったために判例変更がなされるのかどうかが問題になったというものでした。

 弁護側は,判例変更は不公平だと述べていますが,この点について若干補足すると,罪刑法定主義という考え方が根底にあるものです。
 これは,刑事法違反は刑罰を受けるという重いリスクを負う以上,どのような行為が刑罰を受けるのかが予め明らかになっていなければならないという考え方です。
 つまり,今回の判例変更以前は,強制わいせつ罪には性的目的を要求されていたわけですから,いわば性的目的がなければ強制わいせつ罪は成立しないという前提で人が行動できていたのに,ある日突然判例が変更されたから変更されるまでの行為も全て刑事罰に当たるというのは,重いリスクを予想できず,非常に大きな不利益なのではないかということです。
 この点,判例が変わった後の行為が罰せられるのはその通りだと思うのですが,判例が変わる前は適法だった行為が罰せられるというのは予想を大きく超えるリスクを負わされることになって不公平だといえるとも思えます。
 とはいえ,本件のように行為当時には判例に従えば無罪であった行為が判例変更によって処罰されたとしても問題ないという判例もあり,弁護団としては罪刑法定主義を正面から論じられず,「不公平」とコメントするまでに止めたのだろうと思います。

 いずれにせよ,今後の法適用に大きな問題となる判例変更だと思うので,私としてもよく勉強しておきたいと思います。


 野球殿堂博物館は,野球殿堂入り候補者として金本監督を挙げたという記事を見ました。

 金本監督が殿堂入り候補者に挙がるのはある意味当然だと思っています。
 今回名前が挙がらずとも,遅かれ早かれ殿堂入りは間違いないと思っていましたので,正直言って今回名前が挙がったのは早かったという印象です。

 記事では,金本監督の功績について1492試合連続フル出場について挙げていますが,確かにこの記録は素晴らしかったものお,連続フル出場の終盤の方は怪我の影響もあってスタメン選手として実力を示せていなかったので,その記録だけをとって金本監督を語るのは違うと思っています。

 金本監督の現役時代について語ろうとするといろいろと出てきてしまうのですが,敢えて私がもっとも素晴らしい記録を挙げるとすればやはり連続無併殺記録でしょう。
 ホームランバッターは強振して引っ張る打撃が多くなるため,併殺が増える傾向にあると思うのですが,金本監督は左打者で,かつ足が速かったため,全力疾走を継続し続けた結果としてこの記録が生まれたのだと思います。
 また,全力疾走し続けるには,体が頑丈でなければならず,それこそ連続フル出場記録を持つ金本監督だからこそなしえた記録であったとも言えると思います。
 全力疾走するというのはある意味当たり前だとはいえ,金本監督ほどの実績のある打者が常に一塁まで全力疾走をしていたということ自体素晴らしい姿勢であったと言えると思いますし,このような姿勢を継続していたからこそ阪神の他のメンバーが感化されてみなが全力で取り組むようになったのだろうとも思います。

 ほかにもたくさん述べたいことはあるのですが,それは別の機会があればしたいと思います。
 ただ,こうして金本監督の偉業が改めて評価されるというのは,自分が成し遂げたわけでもないのになんだか誇らしい気持ちになるもので,このプレーを生で見られた時代にいて良かったとしみじみ思いました。


 また思いついたら書きます。ではでは。


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三枝康裕 | ニュース | comments(0)  | trackbacks(0) | 23:19
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