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 こんばんは。

 世間を騒がせていたパソコン遠隔操作事件ですが,昨日から片山さんが保釈後に報道機関等に対して出されたメールを自作自演したのではという話が出ておりましたが,今日本人が一連の事件は自分が真犯人であると認めました。

 このニュースを見て,私も同じ弁護士という立場から見て,おそらくこの弁護団はいたたまれない思いをしたのだろうなと思いました。
 私が仕事をしている中でも,いわゆる否認事件といわれるものを担当している最中で自白事件に変わることはありまして,そういうことは弁護士を経験していれば少なからずあることだと思います。
 それだけに,否認から自白に転じたことだけをとって特殊であるというつもりはありません。
 しかし,この事案は,IT関係に関する特殊な知識がないと対応できないものであり,おそらく担当の弁護士はみなこの事件を担当することになってから相当な勉強をしたのだろうと想像します。
 私も未知の分野について依頼を受けた後に徹底的に勉強をして臨むということはしばしばありますが,これはなかなか大変な作業であることはいうまでもなく,ましてこの弁護団は今回の自作自演メールがなければ無罪寸前まで追い込めていたのではとすら思えるので,その努力たるや同業者としても頭が下がる思いです。
 それだけに,結果としてこれまでやってきた活動が無意味になってしまう今回の一件はさぞや落胆したことだと思います。

 今度は心神耗弱,心神喪失を主張する方向で進めるように見受けられますが,これはこれで大変な作業であり,弁護団としては相当な切り替えが必要になるのだろうとお察しします。

 また,本件では無辜の市民が逮捕されるという騒動があり,この方々については人生を狂わされてしまった方もいることでしょう。
 中には大学の身分関係にまで問題が発生してしまった方もいるようで,今回の案件はもはやただ驚かせただけなどという被害では済まないことは明らかです。
 これらの方々の中には自白を強要された方もおり,捜査機関全般に対する社会の信頼を低下させることとなりました。
 この点については,潜在的にあった問題点が顕在化しただけという考え方もあるでしょうが,その顕在化する場面を無辜の市民に対しての行動であることを認めるわけにはいかず,やはりこの点も非常に大きな問題であったといわざるを得ません。

 そして,今回の一件の幕を引いたのは,結局本件の中心にあったIT問題ではなく,捜査機関が従来から得意とする人と足を使った捜査だったということも印象的であると思います。
 今回の件で誤認逮捕をしてしまった原因は捜査機関のIT関係への対応力の問題であったと思いますが,それは本件も無罪が十分争い得たということからみてやはり誤認逮捕後もIT関係の捜査能力は強化できないままかと思っていたところでした。
 そのような流れの中で,最後の決定打は今回の従来の捜査手法に基づく検挙ということですから,結局のところこの自作自演メールがなかったらどうなっていたのか,やはり日本の捜査機関はIT関係には弱いのかということを感じずにはいられませんでした。

 最後に,片山さん本人についてですが,この自作自演メールがなければ無罪になった可能性も十分あった事案なだけに愚かなことをしたという評価となるのでしょう。
 しかし,彼が真犯人であったとするならば,その責任は取って頂くべきで,結果が分かった今から見てみれば,この自作自演メールがなかったとしても何らかの形で責任を負ってもらわねばならなかった人であったとは思います。
 私の拙い考えでは,先の保釈があった際に社会に一時的に復帰したところで,これまで我慢強くやってきたところの堰が切れて解決を急いでしまったのかなというように思いますが,それは私の想像の域を出ませんし,真実は分かりません。
 ただ,今回の件では,真犯人として責任を取らねばならないという意味だけでなく,保釈保証金も没取という意味でも親に迷惑をかけることとなりました。
 しかも,保釈保証金の件については,かけなくてもいい迷惑だったというほかなく,彼の拙い計画によってどういう被害を及ぼしたのかということを今一度身柄拘束されたところで一人になった身でよく考えてもらいたいと思います。

 死にきれなかったという話がありますが,安易に死んでしまっては真相を知りたい被害者のためにも,残された家族のためにも,何より自分自身にとっても無責任だと思いますし,ここからきちんと責任に向き合ってもらいたいと思います。
 今後彼は刑事責任ばかりでなく,犯人に仕立て上げられた無辜の市民の方々などからの賠償責任などの民事上の責任にもさらされることになると思いますが,社会人としてきちんと償ってもらいたいと思います。

 また思いついたら書きます。ではでは。
三枝康裕 | ニュース | comments(0)  | trackbacks(0) | 23:33
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