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 こんばんは。

 今日のニュースを見ていたら,新潟県加茂市で,交通事故防止のため,全小中学生に対して自転車に乗らないように呼びかける文書を配布したという記事があったので取り上げてみました。

 これは,8月に自転車に乗っていた男子中学生が乗用車にはねられて死亡した事故を受けて出されたものということです。
 市長は「あんな悲しい出来事があってはならない。命を守るためにこの程度はいわせてほしい。」と訴えたそうです。
 また,市長は「車はひやひやしながら走らねばならず,非常に危険だ。今や自転車に乗ることは楽しいことではない。」とも述べ,代わりに市営バスの利用を求めたそうです。
 文書では,車が走る道路は危険なので,なるべく自転車に乗らないように,もし乗る場合はヘルメットを被ることなどを求めたそうです。
 市内の小中学校の校長からも賛同を得て,文書を作成して全校で配布したということです。

 今回の市長の提言は,問題提起としては非常に大きな意味があると思います。
 それは,最近注目されている自転車の交通事故の防止についてこれを懸念し,一石を投じようという考えが根底にあるからです。
 私自身,小学校の頃から自転車でそこら中を動き回っていましたが,きちんと交通ルールを意識し始めたのは自動車の運転免許をとった時だったように思います。それまでは,一時停止線の意味は分かっていてもあまり気にせずに走っていたように思いますし,今思えば大変危険な運転をしていたように思うのです。

 ですが,その方法として,小中学生が自転車を運転してはならないというのはやり過ぎであろうというように思います。
 事故が起こると自転車そのものを禁止してしまうことは,自動車事故が発生すれば自動車自体を禁止するということと同じことなのではないだろうかと思います。
 日常的に自動車の交通事故は発生していますし,8月の不幸な事故も一方は自動車だということですが,にもかかわらず中学生の乗っていた自転車のみを禁止して大人の乗車していた自動車の運転を禁止しないというのはアンバランスなのではないかと思います。
 だからといって,経済的な意味や日常生活の意味など様々な意味を考えれば,自動車の運転を禁止せよというつもりもありません。

 また,小中学生は自転車の運転を禁じるものの高校生が許されるというのもどういう理由なのかと思います。
 もちろん成長に伴って判断能力が向上することは当然なのですが,高校生になるまで自転車を運転することなく育ち,判断力は向上していても運転技術が稚拙な高校生は事故を起こしづらいということはできるのでしょうか。

 さらに,市営バスの利用を勧めておりますが,小中学生のお小遣いはあまり多くないですから,その行動範囲は非常に限られてくることになるでしょう。
 もちろん小中学生の行動範囲が大きいのは好ましいとは言えませんが,自転車で動くのは比較的近所であり,そのような比較的近所なところまでバスを利用せよというのは不合理なように思います。
 また,バスの本数もどの程度あるのだろうかと思います。自転車の代わりにするのであれば,少なくとも放課後相当の時間では30分に1本程度は走っていないと自転車の代わりになるとは思えません。

 加えて,自動車運転者が自転車運転者に対して強い警戒を持つことはまさにその通りだと思いますが,かといって市長の言い分は見方を変えると自転車は交通の障害になっているようにも見えなくはありません。
 そのような揚げ足取りは意味がないのですが,かといって自転車というものが存在する以上はそれを組み込んだ上で交通を整備するのが公共団体の仕事であり,それを危険であると指摘して自転車に乗るなというのはやや乱暴な議論に思えます。

 と,いろいろと考えれば,やはり加茂市の言い分は,理解はできるものの強引であることは否めませんし,これを実行するに当たって社会的な整備もできていないのに子ども達に規範を押しつけるようにも思えてしまいます。
 また,これを行うことによって,消極的に自転車業界に対して不平等な取扱をしていると思われ,自転車通学を考えていた中学生に対して売れるであろう自転車の営業利益が失われることに関してどのように考えているのかということも大いに問題であろうと思います。
 条例ではない以上,法規範としての意味はないのでしょうが,それでも私は代替措置の整備も行うことなく単に禁止とした今回の件は安易に過ぎると思うので消極的に考えています。

 今後加茂市でどのように対応していくのかは分かりませんが,もしも自転車禁止を貫くのであればまずは社会環境の整備を十分行うのかという点について注視していきたいと思います。

 また思いついたら書きます。ではでは。

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三枝康裕 | ニュース | comments(0)  | trackbacks(0) | 23:23

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