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 こんばんは。

 今日のトップニュースといえば,もちろんノーベル物理学賞日本人3名受賞でしょう。
 受賞理由である青色発光ダイオードはもはや我々の身近になりすぎて,どれに使われているのか分からないくらいですが,それだけにこれが大変な偉業であることは間違いありません。

 私の個人的な感想としては,これまでの研究成果が認められて非常にすばらしい偉業を達成されたことについてはどんな賞賛の言葉を用いても陳腐になってしまうと思いますし,日本人として誇らしい気持ちもあります。

 ただ,毎回思うことは,私自身は何も努力をしていないのに,他人の努力の積み重ねの末の偉業で私が勝手によい気分になるのは何とも失礼なのではという気持ちです。
 そこで,素直にその誇らしさに酔えればよいのですが,それは私の性格のよくないところなのかも知れません。

 また,これも毎回思うのですが,今回の3氏はいずれもその研究成果についてこれまでもいろいろな場面で数多くの賞を受賞してきて世界中から賞賛を受けてきたはずなのに,私を含めた日本人が再評価するのはノーベル賞を取った時だけなのだなということです。
 もちろんノーベル賞は非常に有名な賞なので,これを取得されたことが注目を浴びることは当然のことです。
 しかし,それでも日頃ノーベル賞ほどは有名ではないにしても権威ある賞をとってきた方々に対して何も賞賛をしないのにノーベル賞だけを殊更取り上げる世の流れについても何だか思うところがあります。

 私の個人的な感情はさておき,先ほども申し上げたように青色LEDは本当に今や日本中に普及し,日常的に何気なく触るスマホなどの電化製品や信号にも使われていますから,もはやこれを目にしない日はないとすら思います。
 世界中でどの程度使われているのかは分かりませんが,それでも世界的な賞を受賞するということは世界中で相当な量が使用されているということでしょう。
 私はノーベル賞の選考基準などはよく分からないものの,世界中の人々の生活を変えるだけの影響力のあるものを生み出したわけですから,そういうものが賞に値するのだろうと思います。

 青色LEDといえば,職業柄,中村氏の特許の相当対価に関する裁判を思い出しました。
 私も過去に何度か職務発明の相当対価について問題となる事件を手がけたことはありますが,このような事件では自分の努力で発明をしたという研究者と,設備を使用させ,費用も支給して発明品を作らせしめた企業とのシビアな利害対立があります。
 この事件以外にも世間で職務発明の相当対価について問題となった事件は多くありますが,青色LED事件は特に第1審で認容した相当対価が極めて高額であったことや中村氏自身が世間に自身のお考えを発信されていたことによって話題になっていたと思います。
 結局,中村氏は海外に研究の場を求めて日本から去ってしまいましたが,今回のノーベル賞は改めてこの事件を思い出させます。
 この研究自体は中村氏が日本にいた時代になされたものなので,「日本人」の研究による受賞と評価できるものなのでしょうが,今後海外に日本人研究者が流出し,その方々が海外での研究の成果でノーベル賞を受賞した場合,たまたま日本国籍を持っていたというだけで「日本人」が受賞したと喜べるのだろうかと思ってしまいます。

 最近の法改正の流れで,職務発明の特許権を原則的に企業に帰属させようという動きがあるように聞いております。
 この辺りは法律改正側の政策判断や価値判断もあるので,それを必ずしもどうだというつもりはありません。
 また,上記の通り,企業側は,それが利益になるか分からない状況下で設備投資などの先行投資を行ったことはまさに投機的な対応であって,にもかかわらず利益が研究者に多く流れてしまうとそれは経営の問題にもなってしまうことでしょう。ですから,特許権を企業に帰属させたいと考えることや,できればその相当対価を減額したいと考えることは理解できなくはありません。
 しかし,今回のノーベル賞の件でも,資源のない日本は科学力でやっていくべき国であると再認識させられる部分もあろうかと思いますが,そういう研究者を海外に流出させやすい環境を作ることだけは避けてもらいたいと思います。
 先の青色LED裁判の最終的な結論は,企業の利益の問題と発明者の対価のバランスを考えられて着地点に到達したのだろうとは思います。しかし,それでもこれによって研究者が多少なりとも失望して海外に行こうと思われたということもあったように思います。
 それに拍車をかける動きは,今後また日本からノーベル賞受賞者を出すことと真逆の方向に進みかねませんし,その点は重々配慮してもらいたいものです。

 ともあれ,今回のノーベル物理学賞受賞は手放しで賞賛させて頂きたいと思います。
 本当におめでとうございました。

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三枝康裕 | ニュース | comments(0)  | trackbacks(0) | 23:28

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