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 こんばんは。

 先日のニュースで,遠隔操作ウイルス事件の被疑者の取り調べに関する弁護人の記者会見のものがあったので,今日はこれを取り上げてみたいと思います。

 この記者会見では,弁護人が,被疑者と事件を結びつける決定的な証拠が示されておらず誤認逮捕であると主張しておりました。
 そして,被疑者の母親から聞いた話として,警察は,自宅前にメディアが殺到して自由に動けない母親のため,日用品の買い出しなどをする一方,母親に対して被疑者と親子の縁を切ると書かれた調書への署名を求めてきたこと(母親はこの署名を断ったようです。)が述べられていました。

 私には,決定的な証拠が存在しないのかや,母親に対して調書に署名を求めたことが真実かどうかは分かりかねますが,もし調書に署名を求めたことが本当だとすればということで以下述べていきたいと思います。

 これが真実であるとすれば,非常に問題のある捜査方法だと思います。
 もしこのような調書作成を要求しているのだとすれば,その目的は,被疑者の精神的な支えを奪うことによって被疑者を追い詰め自白にこぎ着けることというように思えます。
 現に,過去のPCウイルス誤認逮捕事件のうち嘘の自白が強要された2事件では,警察が親に対して親子の縁を切るという調書に署名させて嘘の自白の追い込んだということがあり,自白の任意性,信用性に対して重大な影響をもたらすことが考えられます。

 万一,警察が母親から親子の縁を切るという供述調書に署名を取り付け,その後これを契機に被疑者が自白をしたとしても,この自白調書は証拠能力を失う可能性が高いと思います。
 それは,刑事訴訟法にある自白法則よるもので,その中では「任意にされたものでない疑のある自白」は証拠能力を失うとされております。
 上記の通り,実親の親子の縁を切るという調書は嘘の自白を誘発した実績を持つものなので,これに基づいて被疑者の自白がなされたとしても証拠能力を失う可能性が大いにあると思います。

 そう考えると,その目的が被疑者から自白を取ろうとしたものなのかは何ともいいがたいと思いますが,母親からそのような調書と取る意味はないと思うどころか,むしろ警察の評価を下げるだけになると思います。
 もし被疑者の自白が事件の立証の根幹に位置する場合,自白の証拠能力が自白法則によってなくなってしまえば無罪になってしまう可能性があります。
 仮に,別の証拠によって有罪立証がなされるとして,被疑者が有罪になったとしても,自白調書の信用性が否定されれば,それは警察の強引な捜査の結果ということになります。
 先日の誤認逮捕事件では警察の強引な捜査の問題が取り上げられ,その際に警察は反省を口にしましたが,結局あれは口ばかりで何も変わっていないのではないかといわれてしまっても仕方ないことになると思います。

 私は現在どのような証拠があるのかなどよく分かりませんので,無責任なことを言うのは職責をかけて働いている警察の方に失礼になると思います。
 しかし,敢えて言わせて頂くと,無理な自白を取ろうとしても,その無理さが後で露見してしまえば後の祭りなので,客観的な証拠から固めていく捜査方法を行って頂きたいと思います(既に行っていたり,上記の件が的外れであるならば,大変申し訳ありません。)。

 また思いついたら書きます。ではでは。
三枝康裕 | ニュース | comments(0)  | trackbacks(0) | 23:40

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