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 こんばんは。

 昨日の東京地裁の仮処分決定で,Googleに対して検索結果の削除を命じる仮処分を認めたものがあったので,取り上げてみました。

 これは,Googleで自分の名前を検索すると,犯罪に関わっているような検索結果が出てきたため,これはプライバシー侵害であるとして,その結果の削除を求めて仮処分の申立がなされた事件でした。
 そして,東京地裁は,申立を受けた237件の検索結果のうち,著しい損害を与える恐れがあると認められる122件について,検索結果の「表題」,その下に表示される内容の抜粋部分について削除を命じる決定をしました。

 私もこのような相談は数多く受けるのですが,類似争点でこれまで私が裁判例で見たことがあるのは検索のサジェスト機能,すなわち検索ワードの一部を打ち込むとそのワードに続くいくつかの候補が表示される機能についてです。
 これについては,名誉やプライバシー等の人格権と表現の自由,利用者の利便性などの利益の対立があり,第1審は表示差止を認めたものの,第2審である東京高裁はサジェスト機能の表示差し止めについて認めないという判断を下したものがありました。

 検索エンジンのあり方については非常に難しいところがあり,もはや一企業の商品であるという枠を超えて公共財としての役割すら担っているとも思われます。
 これと個人の人格権の比較衡量の問題となると非常に難しい論点となると思われます。
 ネット技術は情報のやりとりであるだけにプライバシー情報や名誉毀損等と密接に関連するものですから,それは常にいろいろな利益と対立することが想定されたものであると思います。
 また,検索エンジンでヒットする情報はそれこそ膨大な数に及ぶため,例えばそのうちの一部のみを削除したりする命令が出たとして果たしてこれを行うことが技術的に可能なのかという問題もあると思います。

 その上で,今回の事件を見てみると,今回の東京地裁の判断は人格権の方を優先したということなのでしょう。
 しかし,地裁の判断となると,おそらくGoogle側は即時抗告を行い,東京高裁に闘争の場が移ることでしょう。

 この論点は,上記の通り,対立利益が数多く存在し,どれを優先させるべきかという司法の価値判断に委ねられる領域であるため,結論が読めないと思います。
 ただ,今回の東京地裁の仮処分決定は,その中でも人格権を尊重しようという価値判断が行われたという一つの参考事例にはなるだろうと思います。

 私もいろいろと相談を受ける中で,検索でヒットして出てきたものが名誉毀損やプライバシー侵害に当たるというものも数多くあります。
 そのようなものについては,数が少ない場合は,各サイトに対して削除させる方向で話を進めるのですが,今回のように数が非常に多いとなると検索エンジンそのものに動いてもらわねばどうしようもないということもあろうかと思うのです。
 それを考えると,全てにおいて認めないのではなく,ある限られた基準を満たした場合に認めるなどの一定の救済措置を作っておくべきなのではないかと思います。

 プライバシー侵害や名誉毀損などは多様な形がある以上は,その基準を設けるにも抽象的な基準にならざるを得ないと思いますし,その抽象性がゆえに争いが起こることもあろうかと思います。
 しかし,今のように,抽象的な権利同士が対立し,それを司法の価値判断に委ねるということになると,結局当事者としては結論が見えづらく,非常に困ったことになりかねないと思います。
 この点は,本来は立法府の領域であり,これを司法が判例という形で提示することがよいのかということはあるかも知れません。
 しかし,現に発生している問題である以上,司法においてある程度の判例を示すべきなのではないかと思います。
 その意味では,この事件の今後の行く末は,ネット社会において名誉毀損,プライバシー侵害に悩む人たちにとって大きな意味を持つのではないかと思いました。

 また思いついたら書きます。ではでは。

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三枝康裕 | ニュース | comments(0)  | trackbacks(0) | 23:41
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