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 こんばんは。

 今日は,先日より話題になっているある裁判例について取り上げてみたいと思います。

 結婚している夫婦の一方が,異性といわゆる肉体関係になった場合,不貞行為があったとして一般的に慰謝料が認められます。
 しかし,私がこれまで見てきた裁判例では,いわゆる肉体関係にまで至らない関係,例えば二人で町で手を繋いで歩いていたり,二人でご飯を食べたりなどというだけでは裁判所は慰謝料請求を認めていないように思っておりました。

 ところが,先の大阪地裁の裁判例において,いわゆる肉体関係なしで慰謝料請求を認めました。
 この事案を報道で見る限りでは,妻のある夫が女性と交際関係にあったということですが,出張などで互いの地をを行き来し,食事デートを重ねたり,花火大会や体育館でのバドミントンなどの交際はあったものの,いわゆる肉体関係は女性の側で断ったそうです。

 この裁判例は,あくまで地裁のものということで,今後の類似事例での参考になると言ってしまうのには少々ためらいがありますが,このような裁判例がある以上は肉体関係に関する証拠がなくても一応裁判まで仕掛けることは肯定しうるということになると思います。
 ただし,この裁判例を見る限り,以下の二点について留意すべきと思います。

 一点目は,慰謝料額です。
 不貞の慰謝料請求では,一般的に程度に応じて100万円から500万円くらいの金額と言われておりますが,このケースで認められた慰謝料は44万円ということです。
 おそらく,裁判所は,認容額の1割を弁護士費用として認めたと思うので,慰謝料本体は40万円ということと思います。
 そうすると,一般的な肉体関係まで要するものよりも権利侵害の程度を低いと捉えた上で,金額も通常の慰謝料額よりは減額しているというように考えるべきと思います。

 二点目は,その程度問題です。
 この報道を見る限りでは,どの程度の期間,頻度での交際なのかは分かりませんが,少なくとも東京大阪間という遠距離で,かつ複数回会ったという証拠が存在していたように思われます。
 交際ということを立証する以上は,同一人物と複数回会い,しかも今回のようにデートと認定できるような程度の証拠まで要求されるということなのでしょう。
 そして,その証拠から推認される事実が妻への冷たい態度と因果関係があると判断されたということと思われます。
 そうすると,この点の立証を行うに当たっては,それなりの証拠の物量が要求されるように思いますし,夫婦間の関係との結びつきなどの要素も要求されることになると思われます。

 おそらくもっと考えれば問題点はより出てくると思うのですが,パッと見たところで以上のようなものが思い浮かびました。
 とはいえ,この裁判例が存在することによって,一つ言えることは,既婚者が異性と二人きりで遊びに行く行為はそれだけで危険な領域に足を踏み入れることになるということだと思います。
 仮に本人達にそのような気持ちがないとしても,証拠関係や事実関係からそのように推認されてしまう場合は慰謝料請求の対象になりかねないと思います。
 本来慰謝料請求の対象をそこまで広げてしまうことに問題意識も存在するのかもしれませんが,一方肉体関係の証拠がないばかりに請求が認められず臍を噛む方が数多く存在する現状を考えれば,このような救済措置のような判決を下そうとすることはある意味致し方ないのかもしれません。

 この裁判例のような裁判例が今後増えていくのかどうかは分かりませんが,この手の事例に関する今後の動向を見守りたいと思います。

 また思いついたら書きます。ではでは。
三枝康裕 | よろずごと | comments(0)  | trackbacks(0) | 23:26
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