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 こんばんは。

 今日のニュースを見ていたら,アメリカフロリダ州の裁判所で,陪審団が,長年の喫煙によって夫が肺がんで死亡したということで,タバコ大手会社に対して236億ドル(約2兆4000億円)の懲罰的賠償支払いを認める評決を下したという記事を見たので取り上げてみました。

 記事によると,この夫は13歳で喫煙を始め,20年以上にわたり1日最大3箱のタバコを吸い,36歳に肺がんで亡くなりました。
 そして,妻は,タバコ大手会社が,製品の与える健康への危険性を隠していたとして賠償請求をしておりました。
 その結果,懲罰的賠償236億ドル,損害賠償1700万ドルの賠償が認められたということでした。
 大手会社は評決を不服として上訴する方針ということです。

 日本では,そもそもこれだけ周知されたタバコの危険性を知った上で法禁物ではないものを吸っていたということで,おそらく賠償自体が認められづらいのではないかと思われます。
 まして20年以上吸っていたのですから,仮に企業側に責任を認めるにしても大きく過失相殺がなされるだろうと思います。

 一方,今回の陪審団の評決は相当多額の賠償を認めていますが,どのような理由で責任,金額を認めたのかが非常に問題だと思います。
 なぜならば,この事件と類似事案でどうようの判断が下る可能性がどの程度あるかということを検討することによって,他者の身の守り方というものが問題になると思われるからです。

 私は評決の内容は知りませんが,おそらく評決の内容自体はあまり類似事案に対して参考になるものではないのだろうと思います。
 もしもこれが参考になるものであれば,アメリカで商売をして問題が出る度に倒産をさせられるような金額の賠償責任を負わせられかねないからです。

 日本には懲罰的損害賠償という考え方がない以上,その基準というものも捉えがたいように思いますが,それでもさすがに236億ドルはないでしょう。
 日本において裁判員制度導入時,民事に裁判員制度を導入しなかったことの理由として,これを導入してしまえば大企業に対して実質的に懲罰的賠償支払いを認めることになりかねないというものがあったように記憶しておりますが,この事例はまさにそれを思い出させます。

 もしもこの評決が認められてしまうと,同じような人たちがみな賠償請求に殺到するでしょうし,喫煙者の家族は肺がんを危惧して保険に加入することもなくなってしまうことでしょう。
 それだけに,内容は合理的とも思えませんし,他への影響も甚大だと思いますから,その判断理由,判断過程が非常に問題であると思います。
 これだけの重大な評決にもかかわらずわずか2日で結論が出たというものどうなのかなというようにも思います。

 世の中が禁煙の方向に向かっていることが評決の背景にあるのかも知れませんが,世論が禁じる方向に走るものを取り扱う会社にとっては明日は我が身となりかねない非常に恐ろしい評決だと思います。
 それだけに,私はきちんと裁判所に審理しなおしてもらうべきと思いますし,そうでないと司法に対する信頼が失われかねなくなってしまうと思いました。

 また思いついたら書きます。ではでは。
三枝康裕 | ニュース | comments(0)  | trackbacks(0) | 22:16
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